当会の活動

2025.03.18
2025.03.18

2024年度 横浜市PTA連絡協議会研修会

2024年度 横浜市PTA連絡協議会研修会

PTAにできること

~千葉県八街市での交通事故から考える~

講師:濱詰大介(八街市立朝陽小学校元PTA会長、千葉県PTA連絡協議会相談役)

 

2024年9月24日、横浜市市民文化会館関内ホール大ホールにおいて、横浜市立小・中・高等学校及び特別支援学校の各 PTA 会員を対象とした研修会を開催しました。今年は講師として、千葉県八街市立朝暘小学校元PTA会長、千葉県PTA連絡協議会相談役の濱詰大介さんをむかえました。冒頭、「結論から先に言ってしまいますが」と前置きした上で、昨今しばし話題となる、「PTAの存在意義」について言及。「PTAとは、もしもの時に、あるいは困った時に、みんなの助けになる組織であること。むしろそれだけでも良い位なんです。」と言う濱詰さん。もっとも、濱詰さんはPTA活動にかかわるようになった当初からそのように考えていたわけではなく、これは、出来れば経験したくなかった出来事―即ち、令和3年6月にあった、通学路を下校中の朝暘小学校の児童複数名が大型トラックによる交通事故に巻き込まれ、死傷者が出てしまうという、痛ましい事故がきっかけだったという言葉に、会場の空気は一気に静まり返るようでした。

事故現場となった場所は、その5年前にも同小学校の児童が大怪我をする交通事故が発生していた所。「また」あの場所で事故が起きたらしい、との電話が第一報だったことを濱詰さんは振り返りながら、PTA活動を通じて知り合いとなったご家庭が巻き込まれてしまったことを知った時にどれほど驚き、心を痛めたか。また、事故現場はどのような場所にあったのか、地図資料や写真を用いながら、子ども達が具体的にどのようなルートで下校していたのかを説明してくださいました。土地勘のない者でも、その説明を聞くことにより、そこが見通しの良い直線道路でつい車のスピードが出せてしまう場所であったこと、国道からの抜け道ともなる市道で、近くにアウトレットモールが出来たこと等から交通の流れが変わり、交通量に対する不安の声があがっていた場所だったとの説明を聞きながら、より具体的に、イメージできたのではないでしょうか。自分の子どもの通学路、あるいは近くの場所に、似たような場所がないかをそれぞれ思い描くうえで、これらの資料は大変力があったと感じました。

朝陽小学校は、いわゆる一小一中の地域にある学校ということもあり、その分PTA活動も小中一貫のような、密な連携が取れているのだとか。濱詰さんは同校PTA会長として、誰かに言われたから行う活動ではなく、出来るだけ自分たちで考えて動く、自主的な、そして楽しい活動を目指してこられたそうです。その中、このような事故が発生。当時はコロナ真っ最中で、人が集うこともままならない状態です。まさに緊急事態宣言が出ている最中だったそうですが、「これ以上の緊急事態はない」と、集まれるメンバーで集い、何ができるか、手探りながらも形にして行った時の話を、順を追って説明してくださいました。警察署に要望書を出し、小中全家庭に、子どもたちの意見も確認しながらのアンケートをとったこと。その上で、保護者、教職員、そして子どもたちの総意をまとめた要望書、さらには請願書を八街市や議会に送ることになった経緯。PTAという組織が、いざという時にいかに保護者や教職員の思いを一つに団結し、そして今後の対策のためにスケールメリットを発揮できるか、試される時であったことが、手に取るように伝わってくるお話でした。この時に作った、オリジナルの「のぼり」を濱詰さんは今回のために持参してくださいました。のぼりの「Thank you」「安全運転ありがとう」「safe drive」のメッセージ。「スピード落とせ」「飲酒運転するな」のような文言ではなく、何故この文言になったか。これも、この地域で働き、生活をする保護者同士で考えたからこそ出てきた文言だったそうです。今は八街市PTA連絡協議会、八街市教育委員会の賛同もあり、こののぼりは市内の公共施設や小中学校でも配付され、啓蒙活動に一役買っているそうです。

結果、事故現場には、それまでもPTAとして要望を出していたガードレールがついに取り付けられ、車の走行には多少不便になりましたが、子ども達の安全は、その分、確実に守られることになりました。とは言え、この道のりは決して平たんではなく、マスコミ対応もさることながら、「何より、心のケア」が必要だったと濱詰さんは振り返っていました。子ども達の心のケア。そして、大人達にとっても、この事故は受け入れがたいショックだったわけです。その分、直後の緊急保護者説明会では、参加した大人達が「なんとかしなくては」との思いを一つにする、ある意味決起集会のようだったとか。徐々に活動の輪も広がり、地域や行政、企業から協力の声があがり、子ども達の見守りは、まちぐるみでの活動になったそうです。

締めくくりに、濱詰さんが改めて参加者に投げかけた、PTAだけが正解ではないにせよ、その存在意義は、「もしもの時に、困った時に、みんなの助けになる組織」なのであり、日々のPTA活動は、万が一のことが起きた時に、立ち上がることができるための練習なのだという言葉は、強く心に残るメッセージだったと感じています。